悩(なや)みがどうにも解決できないとき、それはたとえば、相手が変わらなければ無理とか過去のいやなことが頭のなかから離(はな)れないときなど、
そんなときは、いっとき心の中の世界に逃(に)げてもいいと思うんだ。
物語のなかに飛(と)び込(こ)む。そこは、自由でわくわくがたくさん。
本を閉じると現実の世界に引きもどされるけれど、本を横目に見ながら「ここ(本の世界)にまた帰ってくればいいのだから」と思う。
本だけではないと思うよ。映画であったり、音楽であったり・・・。
お金をかけなくても、自分の心の世界はひろげることができるんだ。
一日の悩む時間を少しずつ少なくしてみよう。
自分の心の世界で自由に遊ぶ時間をたくさんつくろう。
悩みをほったらかしにするという意味とは違うんだ。すぐに解決できないもの、他人が変わらなければむずかしいもの、過去のいやな思いなど、変えられないものはいっとき離れて、自分の心の世界をつくろう。
そうすれば、自分の心の世界が大きくなり、いつの間にか悩みが悩みでなくなったり、気にならなくなったりするかもしれない。
今月は、ここなび相談員からみなさんの心の世界を広げるお手伝い。
それぞれの相談員が自分の世界を広げるきっかけになった映画をご紹介(しょうかい)します。
つくし相談員
『ロッキー』 『瀬戸内少年野球団』
私の少年のころは、急行電車の止まる駅には、必ず映画館がありました。高校や大学の帰りによく寄り道したものです。特に、洋画の封切(ふうぎ)りが待ち遠しかったことを覚えています。今は、映画館が少なくなりましたが、私の心に残った映画(アニメは除く)で中・高生の皆さんにぜひ見てほしい映画を紹介(しょうかい)しましょう。
老人と海<1958>、マイ・フェア・レディ<1964>、ロッキー<1976>(洋画)、瀬戸内(せとうち)少年野球団<1984>、七人の侍(さむらい)<1954>、一枚のハガキ<2011>(邦画(ほうが))です。
洋画では、私は『ロッキー』がお勧(すす)めです。
主演は、あの有名なシルヴェスター・スターローン。脚本(きゃくほん)も担当しています。1976年のアメリカ映画ですが、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞の作品賞を受賞しています。
みどころは、一人の貧しいボクサー(ロッキー)が、世界チャンピオンになるために挑戦(ちょうせん)し、その努力の姿や苦難をどう乗(の)り越(こ)えていくか、周囲の誘惑(ゆうわく)をどうはねのけていくか、その過程を見て考えてほしいのです。
みなさんも目標を持って、自分の生き方や仕事や進路など将来に向かって挑戦していかなければなりません。この映画の中で彼を支えてくれる恋人(こいびと)のエイドリアンやマネージャーになると言い出したミッキーとの人間関係も無視できません。皆さんにも、あなたを支えてくれる家族や友人がいるのではないでしょうか。
次に邦画です。邦画では、夏目雅子主演の『瀬戸内少年野球団』でしょう。
監督(かんとく)は篠田正浩です。ブルーリボン作品賞を受賞しています。この映画は、淡路(あわじ)島出身の阿久悠(作詞家)の自伝を映画化したものと言われています。
兵庫県淡路島で敗戦を迎えた子供たちの目を通して敗戦の無力感、絶望感から野球をすることで「生きる力」を取り戻していきます。心優しい女教師駒子(こまこ)先生と島の人々の姿を、生き生きと表現・描写(びょうしゃ)されています。主人公の駒子先生は、子供たちのあこがれの先生であり、喪失(そうしつ)感を持つ子供たちの変容に感動することでしょう。
この映画は、亡くなった夏目雅子の遺作であり、32年後の2016年に武井咲主演によって、再映画化されています。どちらも子供たちのエネルギーと、みんな前を向いて一生懸命生きる姿に感動することでしょう。特に、阪神(はんしん)淡路大地震、東日本大地震、熊本地震など体験した私たちの心に希望の灯を灯してくれることでしょう。
紹介したこれらの作品は、図書館やレンタルショップやBS放送等でも探すことができます。ぜひ、ご覧ください。
ピッピ相談員
コメディー映画 『イエスマン~Yesは人生のパスワード~』 主演 ジム・ケリー
ある日のこと。娘(むすめ)からこの映画面白いよと薦(すす)められ、見てみることにしました。
見たあと、自分のかたくな性格を自覚しました。
そういえば、私も主人公と同じで、誘(さそ)いをすぐ断ってしまう。
ちょっとしゃくだけど娘が薦めた理由がわかりました。
人生にYesを。
友達や周りの人からのお誘いは全てNoとことわる主人公。
そのくせ孤独(こどく)でいつも不機嫌(ふきげん)。
ある時、全てにYesと答えるというカルト宗教家と出会う。
その時から出会う全ての人のお誘いには、全てYesと答えた結果…!?
退屈(たいくつ)な主人公の日常生活がいつしか次々と広がっていく。
ある日、掲示(けいじ)板の『韓国(かんこく)語教えます』のメモを取って、
習い始めたら・・・。いつしか韓国女性を助けることに。
『興味ないし・・・。』
『嫌いだし・・・。』
そんな自分の物差しをとりあえず、すべてはずして、
出会うものすべてにYesと答えていく。
問題も出てくるけれど、
すべてをことわっていたときより、
困りながらも、Yesといい続ける主人公はどこか魅力的(みりょく)です。
Yesは自分の世界を広げる言葉。
いつも、友達からのお誘いに断りたくてもことわれない人。
いつもすぐ断ってしまう人。どちらの人にも見て欲しいコメディ映画です。
ぜひ、見てくださいね。 あなたの答えは?
うらら相談員
私の思い出の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
あなたは映画がすきですか、どんな映画がすきですか。それとも、映画はすきでも、あまり見ていませんか。私も映画はすきですが、子どもの時から、年に数回しか見ていません。
だから、大の映画ファンではないのですが、今まで見た映画の中で、二度も三度も見た映画があります。
それは今から30年以上も前の、1984年に公開された、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」というタイトルのアメリカ映画です。
私は、そのときはすでに会社で働いていました。しかし、大人でなくとも、中学生、高校生のあなたなら、ワクワクする映画です。なぜ、ワクワクするかというと、まず、タイトルが面白いですね。直訳すると、「未来にもどる」となり、変な言い方ですね。ふつうは「過去にもどる」か、「未来にすすむ」です。なぜこの題名なのか、映画を見て納得しました。題名だけでなく、内容もハラハラ・ドキドキの連続です。そもそも「タイムマシン」で30年前に戻(もど)ることはできないのですが、その理屈(りくつ)を超(こ)えた、過去の自分を振り返ることの意味を私に教えてくれました。
つまり、自分が過去にとった行動が今日の自分になっている、もし、過去に違(ちが)った行動をとっていたら、今日とは違った自分になっているかもしれない、という意味です。今日という日は昨日から続き、明日へと続く、毎日が流れるような日々ですが、そのような日々の中で、大事なときは、よく考えて行動することが大切だと気づきました。もしかしたら、今日のちょっとした行動が、30年後の自分に影響(えいきょう)を与えていることになるかもしれません。
この映画を見たことのあるあなたは、どんなことに気づきましたか。
まだ見ていないあなたは、見てどんなことに気づくでしょうか、楽しみですね。
しずく相談員
気弱な少年と飛べないドラゴンの絆(きずな)を描(えが)く‐『ヒックとドラゴン』
屈強(くっきょう)なバイキングたちが暮らすバーク島では食料を求めるドラゴンたちとの戦いが続いている。バイキングのリーダーを父に持つ主人公ヒックは気弱で貧弱、変わり者として浮(う)いているためドラゴンとの戦いでは邪魔(じゃま)者扱(あつか)いされていた。
ある日、ヒックは自ら発明した機械で最も危険種とされるドラゴンのナイト・フューリーを捕(とら)えることに成功する。しかし森の中で飛べなくなるほどの傷を負ったナイト・フューリーを見つけても、ヒックは殺すことができなかった。少年とドラゴンは互いに警戒(けいかい)しながらも少しずつ距離(きょり)を縮めていく。トゥースと名付けたドラゴンを再び飛べるようにするために飛行訓練を重ねながら、ヒックはドラゴンの習性を覚え、それをドラゴン訓練に活かして上手く立ち回っていく。
次第に周囲から注目を集めるようになったヒックはドラゴンを敵と決めつけるバイキングたちの意識をどうにか変えたいと思うようになる。
原作のジャンルは児童文学。この作品は続編も制作されました。日本では、続編の公開はされませんでしたがDVD・ブルーレイは発売、レンタルされています。テレビアニメシリーズも制作され、放送されました。
子どもだけでなく大人も楽しめるアニメーション映画です。主人公ヒックが自分なりの戦い方、力を身に着けて成長していく様子に勇気をもらえます!
みんなと同じようにできなくても自分だけの力があるはずだ、ということを強く感じる作品です。
また、人間とドラゴン、争い合っていた種族が共存する(※注1)ことがテーマとなっています。敵を力で押さえつけず、平和的に共存の道を探る。今、この世界に必要なことがこの映画によって語られているのではないでしょうか。
人間同士でも差別や争いが多くある今、ぜひ多くの人に観てもらいたい作品です。
※注1 共存する:一緒(いっしょ)に生きていくこと