社会福祉法人町田市社会福祉協議会
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「先人から学ぶ生き方」

歴史上の人物、と聞いて思い浮かべるのはどんな人ですか?

しずく相談員

戦争、政治経済、日本の発展(はってん)……様々な歴史の中で活躍した人を思い浮かべることでしょう。そのカリスマ性に憧れる(あこが)人も多くいるはず!しかし、彼らの持つ苛烈(かれつ)で華(はな)やかな一面とは別の一面を知っていますか?

『理想を持ち、信念に生きよ。理想や信念を見失った者は、戦う前から負けているといえよう。そのような者は廃人(はいじん)と同じだ。』

そんな名言を残した荒々(あらあら)しい性格で知られる織田信長。実はとっても甘党。宣教師から贈られた金平(こんぺい)糖(とう)がお気に入りだったそうです。そして、日本人で初めてバナナを食べたとされる人物でもあります。

華々(はなばな)しい歴史を彩る(いろどる)彼らも、苦悩し苦労し、失敗した経験があります。その道は決して楽ではなかったでしょう。一人の人間として美しく、時には悲しく生きた過去の人物たち。そんな彼らがもし、あなたの側にいたとしたら。あなたにどんな影響をもたらすのでしょうか?

今回の特集は、「先人から学ぶ生き方」です。側にいて欲しい歴史上の人物、またその人から学ぶことについて特集しています。自分の側にいて欲しい歴史上の人物って誰だろう?そんなことを考えながら読んでみてください!

※史実(しじつ)には諸説あり、嘘か真実かはっきりと分からないこともあります。もっと詳しく知りたい!と思ったら本や資料で調べてみてくださいね!

※史実・・歴史上の事実(じじつ)

ミモザ相談員

先人から学ぶ生き方-「野口英生」

私は個性的な人や、尊敬できる人が自分の側にいて欲しいと思います。
何故なら、その人から受ける影響が自分の成長の糧(かて)になり、自分と異(こと)なる価値観を受け入れられることに繋(つな)がると思うからです。

野口英世は、世界的に有名な学者として特に黄熱(おうねつ)病の研究などで知られます。
天才というよりは努力の人でしたが、それはあくまで自分の興味のある研究などについてでした。

それ以外の部分では、人として随分凹凸(おうとつ)のある性格だったようです。
研究に夢中になるとお風呂にも入らず、貰(もら)ったお給料も遊び(主にお酒)に※散財(さんざい)してしまい、友人や知人から借りることもしばしばでした。

しかし、彼の生まれ育った家はとても貧しかったのですが、自分の信念を貫(つらぬ)いて周囲の人達からの協力を得て成功した人でもありました。

コツコツと努力をするのが苦手な私にとって、彼のように、一本太い芯を自分の中に持ち、信じて突き進む姿にはとても感動させられました。

「忍耐は苦(にが)い。けれどその実は甘い」

これは野口が実際はフランス語で残した言葉です。
努力する過程では辛い事も決して少なくないが、それが実った時ほど嬉しいことはない、という意味です。

信じた道を一歩一歩自分の力で切り開いていった彼の生きる力は素晴らしい。
一方で、彼のように立派な人でも、欠点も失敗も数多くあり、完璧ではなかった。むしろ完璧な人間や平坦な人生なんてつまらないさ、という事を彼の人生が教えてくれるのです。

※散財・・・不必要なことに金銭をつかうこと。また、いろいろなことで金銭を多く費やすこと。

気になったらこの本!・・三上 修平「野口英世―伝染病にたちむかった医学の父」 (学習漫画 世界の伝記)

にこ相談員

先人から学ぶ生き方-「オードリー・ヘプバーン」

ハリウッド黄金時代に活躍した女優、『ローマの休日』でアカデミー主演女優賞を受賞し、映画界やファッション界で大きな名声をあげたオードリー・ヘプバーンですが、幼い頃は両親の争いが絶えず、自分がいい子でいれば両親の争いもおさまるだろうと考え、聞き分けのいい子どもでした。それでも両親は離婚してしまい、やがて戦争が始まってしまいます。母・兄と生活していましたが、戦時中は食べ物も満足に食べられず、深刻(しんこく)な栄養失調になりながらもどうにか生き延びます。戦争を経験して逆境(ぎゃっきょう)に負けない強さが身につきました。また戦争が終わり、食料・自由・健康・家庭、そして何より人の命にありがたみを感じ、深い感謝の念を抱(いだ)いたのです。

19歳の時に映画やテレビの仕事を始め、多くの人から愛と名声を受けた彼女は59歳で引退し、今まで与えられた愛を今度は世界の子どもたちに与える生き方を選び、ユニセフの親善(しんぜん)大使(たいし)に就任しました。当時、内戦の続くソマリアやスーダンなどの子どもたちに笑顔を届けていたといいます。

そんな彼女が生きていくために身に着けた感覚は、彼女の言葉の一つひとつに表れています。

『人生は一度きり、何より大事なのは人生を楽しむこと、幸せを感じること。どんな日であれ、ありのままの一日、ありのままの人々、その日をとことん楽しむこと。未来を心配してばかりいたら、 現在を楽しむゆとりが奪(うば)われてしまう。』

『自分の欠点と弱さを認める事ができれば、自分だけじゃなくて相手にも優しくできる。人はどうしても自分と他人の能力を比べてしまうけれど、ありのままの姿を見せるのが生きる上での最善(さいぜん)の選択になるんだ。限られた時間の中で、どれだけ充実した人生を送れるか、どれだけ自分を楽しめるか、どれだけ学べるかが重要になってくる。ありのままで生きられるようになったこと、自分と他人の欠点を受け入れられるようになったこと、自分に決して諦(あきら)めず、自分の人生を最期まで楽しめたら、それはもうこの上ない幸せでこの言葉通り “良い人生だった”と言える。』

『年をとると、人には2つの手があることに気づくことでしょう。1つはあなた自身を助ける手、そしてもう1つはあなたの周りの人を助ける手です。』

このオードリー・ヘプバーンの考え方は、私がこの様にありたいという想いと同じです。

私は私以上でもなく、私以下でもないありのままの自分でいる事の自由と責任を、良いこともそうでないことも、楽しいことも辛いことも、全てを愉(たの)しんでいたいと思っています。でもチョッピリ立ち止まってしまった時に、オードリー・ヘプバーンの気持ちに触れられるといいなと思います。

気になったらこの本!・・山口路子 「オードリーヘプバーンの言葉」 (だいわ文庫)

うらら相談員

私の友人でいてほしい人-「お釈迦(しゃか)さま」

あなたは本当に困った時、悩んだ時、相談できる友人はいますか?
一緒に悩んでくれてもどうしたらいいか、答えを見つけるのは難しいですね。

私は大人になっても、シルバー(高齢者)になっても悩むことがあります。こんな時、亡くなった人ですが、勝手に、私の友人としています。その友人は「お釈迦さま」(本名はゴーダマ)です。「お釈迦さま」は仏教の(※1)開祖(かいそ)です。「仏教」と聞くと、お葬式(そうしき)を連想(れんそう)しますね。実は、「仏教」は「どう生きたらいいか」を教える宗教なのです。

宗教には、「キリスト教」や(※2)孔子(こうし)が元祖(がんそ)の「儒教(じゅきょう)」などがあります。主な宗教の大切な心を一語で言うと(個人的な(※3)超訳ですが)、「キリスト教」は「愛」を、「儒教」は「孝」を、「仏教」は「慈(いつくしみ)」を教えていると思います。これらの宗教は、表現は違いますが、共通して、人としての生き方を、今から2000年以上も前から伝えています。

私は大人になっても「仏教」や「キリスト教」を信じていませんでした。しかし、シルバーになって、自分の残りの人生をどう生きるか考えていた時に、「お釈迦さま」の教えの一つ、「自利(じり)利他(りた)」に出会いました。「自利利他」とは、「自分の利益だけでなく、他人の利益も図ること」です。私は、この「自利利他」を「他人に役立つ行いをすることで、自分も幸せになれる」と解釈しています。

ここなびへ相談があった時、私は「お釈迦さまならどう答えるかな」と自問(じもん)しながら、回答を考えています。どんな悩みでも、一人で考え込まないで、ぜひ、ここなびにご相談してください。

※1 開祖・・・初めて宗派を開いた人。宗祖。開山。
※2 孔子・・・中国、春秋時代の魯ろの思想家。儒教の祖
※3 超訳・・・自然な日本語に訳すことを目指したもの

気になったらこの本!・・吹田隆道 『ブッダとは誰か』 (春秋社)

ピッピ相談員

先人から学ぶ生き方-「本阿弥(ほんあみ)妙秀(みょうしゅう)」

私は小学生の頃、親に買い与えてもらったオモチャをゴミ置き場に捨てに行ったことがあります。
部屋にあるたくさんのオモチャに息苦しさを感じたからです。
子どもだったので寄付するという手段も知らずにひたすら捨てに行きました。
今でも、私は多くの物を所有するのは、苦手です。物は人に使ってもらうことを望んでいるのではないかと勝手に思っています。もしかしたら、あの時の息苦しさは物たちの願いから来ているのかもしれません。

大人になってから、【清貧(せいひん)の思想】という本のなかで、本阿弥妙秀という女性を知りました。
大勢の子どもや孫が妙秀さんの所に訪れるたび、お土産や着物など持って来てくれるのたけど、妙秀さんはそれらを貰うと、いつも作りかえて、大勢の人に分け与えてしまうそうです。

妙秀さんは、日頃から自分には何が必要で必要ではないのかを徹底的(てっていてき)に考えて行動していたことがわかりました。

妙秀さんに憧(あこが)れて、京都の光悦寺にあるお墓に手を合わしてから、随分(ずいぶん)と時間が経っていますが未だに、要らない物に囲まれて生活している自分がいます。

本阿弥妙秀 1529-1618 戦国 江戸時代前期 本阿弥光悦の母

気になったらこの本!・・中野孝次 「清貧の思想」 (文春文庫)

つくし相談員

家庭教育の進め方-「平澤 興(こう)」

1. 平澤 興 (京都大学第16代総長、医学博士)1900~1989

2. 身近にいて欲しい理由

医学者、脳科学者であり、晩年(ばんねん)は家庭教育の専門家です。子どもには誰でも「無限(むげん)の可能性があります」と、脳の研究結果から全国の母親に家庭教育五訓(ごくん)を呼びかけています。

そして、幼児期、2、3歳児のとき、学校教育を受ける時期と、発達段階を追って「母親(大人)の子どもへの接し方」について優しく説いています。子ども達に教育を施(ほどこ)す大人にとって、いつも近くにいて欲しい教育者なのです。

3. 学ぶこと・学んだこと

・平澤興先生は、子ども達がたくましく、健やかに成長することを願って、全国の母親に家庭教育五訓を呼びかけたのです。それは、①親は、まず、くらしを誠実(せいじつ)に、②子供には、たのしい勉強を、③勉強は、よい習慣づくり、④習慣づくりは、人づくり、⑤人づくりは、人生づくり、と説き、子どもの無限の可能性を伸ばそうと説得し普及(ふきゅう)いたしました。

先生の講義や出版物を読んだのは、私の現役時代のことでした。学んだことは、家庭教育のあり方と子どもへの接し方ですが、その後大いに役立ったことは、いうまでもありません。大人でも子どもでも、何かに挑戦するときは、目標を目指して頑張ります。しかし、失敗した時の周囲の人たちの「ひと言」が、大きな自信と新たな意欲に繋(つな)がることがあります。

失敗をなじるのではなく、よくできたところを評価し子どもや大人に安心感を与える。つまり、自己肯定感(こうていかん)や自尊(じそん)感情を高め、ほめて育てることなのです。親から見て、わが子や子ども達の努力の積み重ねが、子ども自身の人生を豊かにすると思うからです。教育とは、難しい営(いとな)みです。しかし、教える側から見るといかに上手にほめるかだと思います。

教育や躾(しつけ)には、ほめることと叱(しか)ることのどちらも大切です。しかし、欠点を直せというよりも長所を伸ばそうと努力することです。そこに、「子どもの誰にでも無限の可能性がある」が生きてきます。可能性というのは、やればできるという力で、この可能性も、たゆまぬ努力によってのみ生まれると納得しました。

結びに、平澤先生の生き方をひとつ披露(ひろう)したいと思います。

『心ひとつで、見るもの聞くものが美しくなり心の曇(くも)りの被害者(ひがいしゃ)が誰よりもまず自分だということを思うと、自分の幸福のためにも、何とか自分の心の鏡はいつも美しくしておきたいものである。』

気になったらこの本!・・平澤興一日一言 生きるとは燃えることなり (致知出版社)