感染症の影響が長引く中で、戻らないコロナ前の日常。やりたかったこと、好きなことを我慢(がまん)する日々。なかなか出口が見えない生活が続きますね。
その中でも、「一歩前へ」踏み出せる考え方、視点が大切ではないでしょうか。考え方や視点を変えることは、自分自身が変わることにつながるかもしれません。自粛が求められる日々、気持ちだけでも前に向いていけば、これからに続く一歩につながるかも。
うらら相談員
「心の中の一歩」
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩(偉大なる飛躍)である」 この名言は1969年7月20日、人類初の月面着陸に成功した時の船長の言葉です。
今、私たちの大切な「一歩」とはなんでしょう。
一つは前に進むための「行動の一歩」です。私たちは新しいことを始める時、新しい人間関係に飛び込む時、誰かに本音を語る時、頭では分かっていても行動に移せない、一歩を踏み出せないことがあります。また、踏み出しても失敗するのではないか、うまくいかないのではないか、傷つくのではないか、立ち直れなくなるのではないか、そんな恐れが湧き起こってきてなかなか前に踏み出せない時が誰しもあります。こういう悩みに対して、ここなび相談員が回答してきました。また、インターネットや書籍などにいろいろな解決法が紹介されていますので、参考になると思います。
ここで紹介したいのは、もう一つ、「心のなかの一歩」です。どういうことか、事例「Aさんの日記」でみていきましょう。
「私には2人の親友がいます。1人は一緒に宿題をしたり遊んだりするBさんです。Bさんと一緒にいると楽しくて時間を忘れるほどです。もう1人は私のグチや悩みを聞いてくてるCさんです。でも慰めてくれたり、アドバイスをくれたりはしません。最近、2人のことを考えることがあります。Bさんは宿題の時は私を頼りにしているけど、遊ぶ時は他の友だちと仲良く、少しおいとけぼりにされている感じです。もう1人のCさんは私が話している間、私の目を覗き込んで、よく“うん、うん”とか“そうなの”とか言っていました。今、思うと、私のグチや悩みを受け止めてくれて、とても話しやすい、私を分かってくれているように感じます。」
この事例から、Aさんは親友の見方が変わったことが分かりましたね。本当の「親友」とは何か、を考え、深まりました。だからと言って、Aさんは明日、Bさん、Cさんに会った時、お互い、今までと同じかもしれません。しかし、Aさんの「心のなか」は確かに変わりました。
このようにひとの見方が変わったことは、自分を成長させる「心のなかの一歩」と言えます。「心のなかの一歩」はひとの見方だけでなく、ものごとの見方、世界の見方にもかかわり、なにげない日常のなかで自分の考えや行動を振り返ることで気づくことがあります。ものごとの見方では、普段はよく会っている人(例えば、祖父母)とは今はコロナ禍なので、パソコンやスマホを使ってオンラインで会うことができますね。しかし、実際に会うのと違って何か物足りなさを感じませんか。見方を変えると、親しい人とは物では代用できない、身体的近さが大切であることに気づきます。また、世界の見方では、例えば、買い物でよく使うレジ袋の有料化が世界的に進んでいます。その理由は、現在、大量に海の中に捨てられたプラスチックが、将来、数ミリに分解されたマイクロプラスチックとなり、それを魚が食べ、また、その魚を私たちが食べることになるからです。
レジ袋を買うかマイバッグを持つかという見方を変えて、将来のことも考えておくことが重要だと気づきます。
このように、私たちは「心のなかの一歩」を一歩、また一歩と重ねることで、私たちの心のなかに大切にしたい価値観が築かれていきます。その価値観は行動を起こすときに大事な役割を果たすでしょう。
ミモザ相談員
「ゆっくりと一歩前へ」
私たちの乗っている、この大きな船は何処へ行くのだろう。
時々船は大きく揺れて、その度に私たちはひやりとする。
船長は、何を思って舵をきっているのだろう。
私たち一人ひとりの命を預かっているというのに。
本棚から古いお気に入りの画集を見つけた。
ホコリをはらって久しぶりにページをめくってみると、10年前の自分に出会えた気がした。あの時の感動を思い出したくて、隣に並んでいた旅のガイドブックもパラパラとめくる。
青い海を背景に笑っている私の写真がはさまっていて不思議な気持ちになる。
ふと、ずっと何かに追われていた自分に気がついた。
私は、私の心の声を聴いてあげていなかったかもしれない。
ああ、私はこんな絵が大好きで、こんな場所に癒されていたんだっけ。
この航海の行きつく先は誰にもわからない。
だけど、航海が終わるその時までに、私は私の声に耳をすませて、どんな人生を歩みたいのか、準備をすることならできるんじゃないかな。
途中で変わることもあるかもしれないけれど、それもまた人生。
窓の外を見ると新緑が美しい。
スケジュール帳やカレンダーには心躍る予定はないけれど、
今、私は生きている。
窓を開けてみると、時折強い風も吹く中、心地よい風が吹いている。
遠くに、ウグイスの声も聞こえる。
今、ここにこうしている自分なんて想像もしていなかったけれど。
弱かった自分も、迷っていた自分も、頑張った自分も、全部、今の私につながっている。
ここまで来れたんだもの、きっと大丈夫。
わたしは、わたしの人生を生きていこう。
にこ相談員
「踏み出す勇気」
今から何十年も前、私が小学4年生の時のお話です。
通っていた小学校には5年生から入部できる鼓笛隊があり、その中のバトン部に憧れていました。バトン部は各学年10人と決められていて、4年生の時に希望者が集まり選別されます。その条件の中に「身長が高いこと」とありました。
その時の私の身長はクラスの真ん中よりも前の方でした。どうしてもバトンがやりたかった私は、集まった教室で正座をして椅子に座りました。希望者が前に並んだ時に、「あれ、君高く見えたけれど低いね」と言われてしまいましたが、どうしてもやりたいんですと訴え、君のやる気を見てと11人目に選んでくださいました。5年生になって身長はぐんぐんと伸び、クラスの後ろの方にまで成長しました。大好きなバトンを毎日毎日練習していると、いつの間にかトップで演技するようになっていました。その後もバトンを続け、大人になるとセミプロになり、世界大会も経験することができました。今振り返ると、バトンを通してさまざまな壁を乗り越える力を身に着けました。やりたいことを続けたことで行動や物事を考えていくときの自信にもなりました。
今はいろいろと動くことができない日々が続いていますね。
でも、自身で考えてみる時間はたくさんあるかなと思います。
今までにやってみたかったことを思い出してみたり、自分の周りにはないけれど興味があることなどを調べておくと、行動できるようになった時に一歩踏み出しやすくなるかもしれません。